大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和26年(れ)2446号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人松浦工業株式会社、同松浦伊平、同大河内甚太郎の弁護人牧野良三、新家猛、坂野滋、被告人二場勇、同富田五郎、同北浜勝市の弁護人中栄敬太郎、被告人浜田耕一、及び同宮本寿一の各上告趣意(後記)はいずれも刑訴四〇五条に定められた適法な上告理由に該当しない。

職権を以て審査するに、原判決の確定するところによれば、被告人等はいわゆる自給塩を法定の除外事由がないにもかかわらず、統制額を越えた代金を以て或は販売し、或は買受け、或は販売の周旋をしたというのであって、原判決はこれが統制額として昭和二二年一〇月三〇日物価庁大蔵省告示第一二号に基く同年一二月二三日高松地方専売局長公示第二号の定める薪使用による蒸気利用式製塩の賠償価格及同年一〇月三〇日岡山地方専売局長通牒塩第八三四号の定める代燃使用による蒸気利用式製塩の賠償価格を挙示していることは原判文上明らかである。しかしながら自給塩を法定の除外例なくして売買する場合において、その統制額となるものは、塩専売法及び塩売捌規則の定める販売価格である。しかして、このことは、自給塩を製造した者が自ら譲渡する場合たると、自給塩を譲受けた者が更にこれを転売する場合たるとを区別することを要しないものというべきである。(昭和二四年(れ)第二九六七号、同二五年九月二九日第二小法廷判決参照)されば、原判決は如上の点において擬律錯誤の違法あるものであるが、統制額として原判決のごとく右賠償価格に依ることは、塩売捌規則の定める販売価格によるよりも、被告人に採って有利であることは顕著であるから、(原判決も、有利なことを認めている。)原判決の右の違法は未だ以て刑訴四一一条にいわゆる原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとみとめることはできない。その他、記録を精査しても同条を適用すべき事由あるものとはみとめられない。

よって刑訴施行法三条の二刑訴四〇八条により主文のとおり判決する。

この判決は、裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例